ミッションは、どっちを使う?
TURBO IIのインタークーラー付きターボエンジン(ドッカンターボ)を載せるとき、組み合わせるミッションはTURBO IIの5MTとカブリオレの5MTのどちらがいいか。ギア比と、加速のシミュレーションで比べた。
★結論
差は発進の仕方しだい(計算)。ふつうに2,000回転くらいで発進すると約0.4秒、2,500回転なら約0.35秒、ターボを効かせた3,000回転以上の発進なら約0.1秒の差(下の表)。0-60km/hも同じ傾向。
同じ速さでのエンジン回転が、1〜4速で約14%高い。ターボが効く回転に早く届き、音も元気。そのかわり高速の5速100km/hは約3,110回転でうるさめ。
5速100km/hで約2,500回転。高速道路は静かで、燃費も一般に良い。ただしドナー車のミッションは調子が分からない。
信号GP・0-100重視ならカブリオレの5MT。9/19の搬出の日に自走で移動できていて(全部のギアの確認はまだ)、手間もTURBO IIの5MTと同じ。ただし、カブリオレのミッションにTURBO IIのエンジンを組んだ実例は見つかっていないので、組む前に「入力軸に新しいクラッチディスクがスッと入るか」を確かめる。速さをさらに詰めるなら、ミッションよりLSDとタイヤのグリップが効く。
12つのミッションの違い
1〜4速のギア比は同じ。違うのは5速と、全部のギアにかかる最後の歯車「ファイナル」だけ(黄色の行)。
| ギア比 | TURBO II | カブリオレ |
|---|---|---|
| 1速 | 2.916 | 2.916 |
| 2速 | 1.764 | 1.764 |
| 3速 | 1.181 | 1.181 |
| 4速 | 0.846 | 0.846 |
| 5速 | 0.655 | 0.714 |
| ファイナル | 4.066 | 4.642 |
タイヤを回す力は「ギア比 × ファイナル」で決まる。1〜4速ではカブリオレの方が約14%強く回し、そのぶん各ギアで出せる速さは約14%低い。5速は比率そのものも違うので、差は約24%。「ファイナルを低くする」は、数字を大きくして加速寄りにすること。
2ギアごとの上限の速さ
最高出力の5,500回転まで回したときの速さ(タイヤ 175/60R14)。
グラフを読み込めませんでした。下の表で同じ数字が読めます。
| 5,500回転 | TURBO II | カブリオレ |
|---|---|---|
| 1速 | 49km/h | 43km/h |
| 2速 | 82km/h | 72km/h |
| 3速 | 122km/h | 107km/h |
| 4速 | 170km/h | 149km/h |
| 5速 | 220km/h | 177km/h |
グラフは1〜4速。0-100km/hは、どちらも1速→2速→3速の2回の変速で届く。4速・5速の数字は、空気の抵抗と馬力でもっと手前で頭打ちになるので目安。
3同じ速さのときのエンジン回転
「よく回る」とは、同じ速さでエンジンの回転が高いこと。エンジンそのものは同じ。
| 場面 | TURBO II | カブリオレ |
|---|---|---|
| 1速で40km/h | 4,448回転 | 5,079回転 |
| 1速で3,000回転(ターボが効く)になる速さ | 27km/h | 24km/h |
| 3速で100km/h | 4,504回転 | 5,142回転 |
| 5速で100km/h(高速巡航) | 2,498回転 | 3,109回転 |
4加速シミュレーション
発進から120km/hまで。線が左上にあるほど速い。上の細い帯は、タイヤが空転していた区間(青がTURBO II、オレンジがカブリオレ)。ボタンで条件を切り替えられる。
グラフを読み込めませんでした。下の表で結果が読めます。
| ミッション | 0-60km/h | 0-100km/h | 0-400m |
|---|---|---|---|
| グリップ:ふつう・3,500回転で発進 | |||
| TURBO II | 4.3秒 | 9.4秒 | 16.8秒 |
| カブリオレ | 4.3秒 | 9.3秒 | 16.9秒 |
| グリップ:高め(ZIII想定・推定)・3,500回転で発進 | |||
| TURBO II | 3.9秒 | 9.0秒 | 16.4秒 |
| カブリオレ | 3.9秒 | 8.9秒 | 16.5秒 |
| 空転しない場合(理論上)・3,500回転で発進 | |||
| TURBO II | 3.8秒 | 8.9秒 | 16.3秒 |
| カブリオレ | 3.5秒 | 8.5秒 | 16.2秒 |
| グリップ:ふつう・2,000回転で発進(ふつうの信号スタート) | |||
| TURBO II | 5.0秒 | 10.1秒 | 17.4秒 |
| カブリオレ | 4.7秒 | 9.7秒 | 17.2秒 |
◀ は0.2秒以上速い方。差が0.2秒より小さいところは、計算の誤差の範囲なので印を付けていない。
発進の回転ごとの0-100km/h(グリップふつう)。差の大きさを比べるための参考値で、0.2秒より小さい差は誤差の範囲。
| 発進 | T2 | カブ | カブが速い |
|---|---|---|---|
| 2,000回転 | 10.14秒 | 9.70秒 | 0.44秒 |
| 2,500回転 | 9.78秒 | 9.43秒 | 0.35秒 |
| 3,000回転 | 9.40秒 | 9.29秒 | 0.11秒 |
| 3,500回転 | 9.40秒 | 9.29秒 | 0.11秒 |
加速すると車の重さが後ろに移り、前輪(駆動輪)の押し付けが抜ける。3,500回転で発進すると、どちらも1速のあいだはタイヤが空転していて(ふつうのグリップで TURBO II 約3.2秒/カブリオレ 約2.9秒)、ファイナルの差が出にくい。
ふつうの2,000回転発進では、ターボが効く3,000回転に届くまでが勝負になる。カブリオレは回転の上がりが速いので、そこで差が開く。
- 当時の実測(TURBO II純正・0-100km/h 8.9秒)に合わせてエンジンの力を調整。この時の計算値は 0-60 4.25秒/0-100 8.9秒/0-400m 16.49秒(実測の0-400mは16.3秒)
- 今回の車: カブリオレ800kg+ターボ化の増分15kg(仮定)+運転する人75kg=890kg、タイヤ 175/60R14
- 6,000回転で変速・変速に0.45秒。発進の回転は、グラフが2,000回転と3,500回転、表が2,000〜3,500回転の4通り。発進の回転は、車の速さが追いつくまで一定とした(クラッチを滑らせて回転を上げていく動きは入れていない)。そのため2,000回転発進の差(約0.4秒)は大きめに出る側の数字で、2,500回転なら約0.35秒、3,000回転なら約0.11秒
- エンジンは3,000回転で一気に力が立ち上がる形。実際の性能曲線は手元に無く推定
- 空気の抵抗・転がり抵抗・駆動の損失・前輪荷重の抜け(空転中も含む)を入れている。LSDは無し
- 最高出力の回転は、1983年の資料では5,500回転、1986年版の諸元表では5,000回転と出典で違う。ここでは5,500回転を使った
- μ(ミュー)
- タイヤと路面のすべりにくさ。1.0なら、押し付ける力と同じ大きさの力まで滑らない。「ZIII想定の1.15」は推定の値。
- 0-400m
- 止まった状態から400m走るまでの時間(ゼロヨン)。
5速さを詰めるなら
ミッションの差より大きく効くのは、空転を減らすこと。
- LSD(空転を抑えるデフ): 当時のブルドッグレースでも無限製LSDを使っていた。
- タイヤのグリップ: シミュレーションでは、グリップを0.95→1.15に上げると0-100が約0.4秒縮む。
- 発進の仕方: ドッカンと効く瞬間にアクセルを少し戻して、空転を抑える。
6作業と工程
どちらのミッションでも作業はほぼ同じ。エンジンとミッションは一度切り離して、新しいクラッチを組んでから合体させる。
- 降ろしたノーマルエンジンからミッションを切り離す約1時間
- ミッションの点検と、ドライブシャフト側のオイルシール交換約1時間
- 新しいクラッチディスクが入力軸にスッと入るか当てる数分
- 軽量化したフライホイールを取り付け約30分
- 新品のクラッチを芯を出して組む約30分
- 新品のレリーズベアリングに交換約15分
- エンジンとミッションを合体して、一体で載せる約1時間+載せ替え本体
時間は手順書と先人の作業記録からの目安。フライホイールの軽量化(削る・バランス取り)を外に出す場合は、その待ち日数の方が日程に効く。
「TURBO IIの5MTに、カブリオレの5速(0.714)を組む」などは、ミッションのケースを割る分解作業になる(半日〜1日の目安)。中のベアリング(91004-PE6-008など)はメーカー廃番。ファイナルの小さい歯車は軸と一体なので、変えるなら「カウンターシャフト+ファイナルギア」を組で替える。
7カブリオレのミッションは、そのまま付くか
純正カタログで、つながる所は全部共通だった。
- ミッションケース・クラッチハウジング(21000-PB7-000)・クラッチのレリーズ・シフトアーム/ロッド
- デフのサイドギア(41221-PC8-911)=ドライブシャフトが刺さる所
- 1〜4速のギアと、スピードメーターを回すギア
- クラッチディスク(アイシン DH-007)は「シティ 81年〜」全車用で、TURBO IIの純正品番にも適合
カブリオレのミッションの入力軸に、新しいクラッチディスクがスッと入るか。先人の載せ替えはTURBO IIのミッションを移していて、カブリオレのミッションのまま組んだ実例は見つかっていない。
8出典
- ホンダ旧車ページ 諸元表: カブリオレ/ターボII
- ホンダ ファクトブック(1983年10月): ターボII 主要諸元
- 当時の加速の実測(0-100km/h 8.9秒・0-400m 16.3秒): GAZOO(どの雑誌の測定かは記事に無い)
- ブルドッグレースの車両規則と仕様: 規則/レース車の仕様(CITY of life)
- 部品の共通・品番: 純正パーツカタログ(ターボII 11SA702・カブリオレ 11SC701)を機械比較
シミュレーションは手元の計算(_tools/gear_sim.py)。エンジンの力の出方は推定なので、組み上がったら同じ道で0-100を実測して確かめる。